21世紀の世の中でも多くの人々が恐れていること
「人から人に病気が移る」
そうした伝染現象であります
飛沫感染だの接触伝染だの言われております
これは人類が、その歴史の中で感染症の猛威と闘ってきたという洗脳教育の賜物なわけですが。
それが如何に迷信めいた考えであるかです
太古の昔から理不尽な脅威を理解する為に人々は迷信めいた考えに依存してきました
それが時代によっては占いであったり、神仏の崇拝であったり、ある種の宗教儀式であったりするわけですが、マスクがその現代版のアレンジと言えるでしょう
それは人類が撲滅したと言われる天然痘においても当て嵌まります
現代人ですら恐ろしい感染症と教えられますが、ではそれを経験していた当時の人々の様子はどのようなものだったのかを知る機会は恐ろしく少ないです
1902年に出版されたThe Vaccination Superstitionに収録されている"Dr.Rodermund's experiment"を翻訳いたします
非常に奇特な方で、この方を調べるだけでも驚きの経歴が見つかったりするのですが、ホンの序章としてこちらのお話をご紹介いたします
如何に天然痘、並びにその脅威が誇張されて現代に伝わっているかをお伝えする話としてこれ以上の文献はないでしょう
世間の騒ぎを冷めた目で見ている人、公的機関の煽りに惑わされて迷信めいた考えを鵜呑みにする人々の構図が、現代と何ら変わりなくそこにある様子が描かれています
それでは参りましょう
1901年1月21日月曜日午前11:30頃、私はX氏の住まいにお邪魔した。ミス.スタークが天然痘で療養している部屋だ。 私が入るや、X氏は椅子から飛び上がってこう言った。
「誰も入れてはならないと言われております」
「気にするな」と私は答えた。
「私は誰でもないさ。まぁ、君は多分間違ってはいないのだろうな。」
私は、天然痘患者の様子を見に来たのだと伝えた。
「彼女はそこにいます。」
彼が指差す所、若い女性が部屋の離れた隅にいた。夫人が窓際で縫物をしていて、2歳程の子供が部屋を走り回っていた。
「天然痘をもらうことが怖くないのか?」と尋ねた。
「はい。」夫人が応じる。「怖くなどありません。」
「ただお医者様方が、この病は伝染性が強いのだと。” 患者を他の家族と隔離しないのは不注意で怠慢ではないか?これは真の天然痘症例だ、この膿が詰まった大きな膿疱が分かるだろう” と言うのです。勿論、他人から病気が移るなんてないと分かっていますとも。」
それが正しいことを見せようと、彼女の顔と腕の膿疱を幾つか潰して溢れ出た膿を、私は自分の顔全体、両手と髭と衣服に塗りたくり、同時に「これから帰宅して食事を摂る」と告げた。
食事中家族には何も言わず、誰に漏らすこともなく職場に直行した。職場に最初に来たのは旧友のT牧師だった。彼はノースミルウォーキーで教区を持っている。私達は堅い握手を交わした。実をいうとこの時、私は自分が膿塗れであることを完全に失念していた。私は彼に一冊の本を贈った。我々の科学的かつ気儘な公の詐欺師に則れば、私はこの本と目の前の紳士を天然痘の病原菌塗れにしたに違いないのだろう。見返りに彼はアップルトンの多くの人々、電車で出会った人々、挙句自身の信徒全員に暴露させたことになる。本に付着した病原菌は、敬虔な紳士の心の故郷で今も寛いでいることだろう。
同日の午後、私は職場で、眼の治療と眼鏡の調整で数人の顔に触れた。4時から6時、そして8時から10時、私はビジネスメンズクラブで、メンバー達とカードゲームに興じていた。
午後の会話は、午前中に私が訪ねた天然痘症例の件に移った。暫く議論を交わした後、その場にいた者の中で、天然痘患者の元を訪れる場合に家族の元に帰宅するかと尋ねてきた者がいた。私は普通の風邪患者を訪ねる場合と同じようにそうすると答えた。
最後にディキンソン氏、ある銀行のキャッシャーだが、彼は皮肉めいてこう言った。
「先生、そんなバカみたいなことを言って何になるのですか?天然痘患者を見舞った後に帰って家族と川の字になるなんて、帰って子供を撃ち殺すようなものでしょう。アナタはそこまで馬鹿じゃないはずだ。」
読者諸君は、この時の私の心中を察してくれることだろう。正にその時私が天然痘の膿に塗れていたことにも、遊んでいたカードにこの毒が乗っていることにも気付く者はいなかった。まだ私の訪問のことは口にしていない。また、私が自分の行動が知られることで彼らの気分を害することを少しでも想定していたなら、クラブルームに出向くことなどしなかっただろう。私は紳士諸君の内情も弁えた上で自他ともに敬意の念を抱いていたからだ。仮令彼らの思い込みが愚かな迷信に過ぎなかったとしても、だ。私は同じことを過去15年間に亘って繰り返してその結果を見守ってきたが、微々たる害も与えたことはない。
話を戻すと、その日の夜にクラブルームを出た後、私は帰宅し、家族と就寝し、翌朝手も顔も洗わず、同じ服を着たまま、グリーンベイ行きの列車に乗車した。グリーンベイで朝食を摂った後にM氏の店に直行した。彼の顧客向けに眼鏡を作ることになっていた。この日、27人の顔に触れた他に、街中や帰りの電車の中にも顔を出した。
翌朝(水曜日)手と顔を洗った。膿塗れになって46時間半が経過して初めてのことだ。私が職場に着くと、数人の報道陣が待ち構えていた。天然痘患者を訪ねて膿塗れになった私の報道の真偽を確かめたいようだ。当初、私は肯定も否定もしなかった。知られたくなかったからだ。しかし、どうやら近所の方の一人が、私が家から出る場面を目撃しており、保健所の者に訊いてしまったようだ。「月曜にローダームンド博士が家から出るのを見たが、ここの家庭は医師を変えたのか?」と。
結果的に、私にできることは、真実を正確に伝えることだけだった。しかし新聞は真実に出鱈目なことを混ぜていた。そうして大衆を誤誘導したかったのだろう。他にも、私が恰も自分の功績を誇示しているかのように宣伝してきた。そうした大衆にとって利益となる革新的な真実に人々が向き合う準備ができるまで、私には世間の認知を得ようという意図がないことを連中が知った時に、である。
水曜日は一日中、街中を自由に動き回ることが許されていたが、4日目の木曜日には検問がかかり、家の周りには警官のガードが張り巡らされていた。人々は保健所長、医師、公務員、新聞記者が集まったことに沸き立っていた為、警官の一人が「強力なガードマンに守られている方が良い。そうでなければ命の方が危ない。」と言ってきた。
土曜日、私は5人の警官の検疫を突破し、40マイル走ってワウパカに向かい、電車でシカゴに向かい、そこから(インディアナ州の)テレホートへ行き、その後、帰宅途中のミルウォーキーで拘束され、隔離病院で4日間拘留された。以上が、波乱を呼んだエピソードの大まかな概要である。
世間を欺く聖人君子は、あらゆる方法、形式、作法で、天然痘の症例を私の行動に結びつけようとしたが、無駄だった。私が5万人の人々に暴露し、37人の顔に膿のついた手をこすりつけた後でさえ、彼らは私に不利なことは何も見つけられなかった。近い将来、この数年間に私の身に起こった同様の事件をいくつか紹介するつもりだが、それはこの事件よりもはるかに興味深いものである。
このような何千人もの医学界の悪党、殺人者、詐欺師の中から、次のような賞を受賞する人が一人も出てこないのはなぜだろうか?
「病の伝染性を証明できたものに1000ドル、その証明に費やした一日当たりにも10ドルの報奨金の授与」
医師たちは、迷信によって人民が最も統制されることを知っている。だから、問いたい。あなた方は、医師以上に咎められるべき者ではないか?
半数以上の民衆は伝染現象など信じていない。しかし彼らはそう発言する勇気がないのだ。議論と主張だけでは現状を変えることはない。彼らが活力ある人間に法も富も集中していることに対して疑問を持つことはない。真の知識と結びついた強力な国民感情こそが唯一の救済策である。古き迷信に溺れている限り、殺人者たちは、金の為に、民の為の憲法を破壊し続けるだろう。
一人でも背いたら国中に忌まわしい病が蔓延する、そんな法律を神がお創りになったと、”正気”の人間は信じているのだろうか?この迷信は、全能の正義に対する冒涜である。
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